次期社長の甘い求婚
「だからその……えっと……」


ここまで言っておいて、うまく口が回らなくなってしまう。


だって『仕事頑張ってください』とか『だから負けないでください』とか……。それはなんか違う気がするから。


それなのにしっくりくる言葉が見つからない。


伝えたいって気持ちが溢れるばかりで、それを言葉にして伝えることができないもどかしさに、焦りが増してしまう。


「もういいよ、美月」

「……え」


なにか伝えないとと、躍起になっていた私に落ちた優しい声色。


「美月の気持ち、しっかり伝わったから。……ありがとう」


ギュッと握り返された手に胸が締めつけられてしまう。


「美月を好きになって、本当によかった」


顔を上げれば、とびきり甘い瞳で私を見つめる神さんがいて、胸の苦しみを堪えるように唇を噛みしめてしまう。
< 210 / 406 >

この作品をシェア

pagetop