次期社長の甘い求婚
なに思い出しちゃっているのよ。
あんな人、二度と会うこともないし、会いたくもない。


最近思い出すこともなかったのにな。


きっともうこんなことはないだろう。

思い出すきっかけを与えた神さんには、二度と声を掛けられることはないだろうから。


彼は時期社長で、今は研修中の身。

あと数ヵ月すれば、次の勤務地へ異動してしまうし、そうなれば会うこともなくなるだろう。


大きく息を吐き、気持ちを入れ替え庶務課のオフィスへと戻っていった。




この時の私は、神恭介という人間を上辺だけしか見ていなかったと思う。
ううん、見ようとも知ろうとも思わなかった。


だって彼には、全く興味がなかったのだから――。
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