次期社長の甘い求婚
「あっ、あの神さん」

「ん? どうした?」


戸惑いがちに声を掛けると、心配そうに顔を覗き込んでくる彼にますます戸惑っていく。


「その、えっといいのでしょうか? こっ、こんなところに来ちゃって」


ダイレクトに「私、場違いじゃないですか?」とは聞けそうになく、曖昧な質問になってしまう。


それにここは有名な高級ホテル。

値段の高いところにこの前のように連れてきてもらっちゃって、申し訳ない気持ちにもなってしまう。


ちょうど到着した誰も乗っていないエレベーターに乗り込むと、神さんは申し訳なさそうに話し出した。


「美月に俺の価値観押しつけるなって言われていたのに悪い。……でもどうしてもここに泊まりたかったんだ。この前はせっかくふたりで泊まったのに、美月はずっと寝ていただろ?」


「それはっ……」


「それとここから始めたかったんだ。……美月のこと好きだって自覚した日に、ふたりで過ごした思い出のホテルで」


神さん……。

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