次期社長の甘い求婚
エレベーターは目的の階に到着し、静かにドアが開いた。

するとなぜか神さんは肩に回していた腕を外し、少し私を距離を取る。

そして戸惑いがちに尋ねてきた。



「ここまで連れてきてあれだけど……部屋に入ったら俺、自分を押さえる自信ないから。……今まで散々遊んできたけど美月は違う、特別だから。大切にしたいし、美月が少しでも嫌だと思うことはしたくないんだ。だから嫌なら正直に言って欲しい」



神さんの瞳から、あぁ、私って大切にされているんだなって実感させられる。


でも神さん、そんな心配無用です。

それに私、ちゃんと「好き」って伝えたじゃないですか? それなのにここまで来て嫌になるはずないのに。


それなのに私の気持ちを汲み取って聞いてくれた神さんに、愛しさが募っていく。


『大丈夫』と伝えるように、神さんの腕にしがみついた。


「嫌なわけないじゃないですか」

「……分かったよ、途中でやめてって言っても無理だからな」


そう言うと神さんは私の手を取り、エレベーターを降りていく。


そしてある部屋の前で立ち止まると、ポケットからカードキーを取り出しロックを解除すると、先に部屋の中へ押し込まれてしまった。
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