次期社長の甘い求婚
「ここで最後、と」

脚立を立て、切れていた蛍光灯の最後の一本を交換していく。


規定の制服がない我が社。それなりに服装には悩むところだけど、私は仕事しやすい服装が一番だと思っている。

庶務課ということもあり、こういった雑用全般を任される機会が多い。
それなのに、丈の短いスカートを履いていたら脚立になんて上がれないし。


今日の私の服装は動きやすいチノパン。


だから鈴木主任は真っ先に私の元に駆け寄ってきたのだろう。
他の女性社員は本日見事にスカートだったから。


もちろん私だってたまには鈴木主任に見てもらいたくて、女子力高めの服装で出勤することもある。

それは会議とか雑用をやらないで済むような日を狙ってだけど。


まぁ……そんなアピールも、あの鈴木主任には全く通じていないと思う。

けれどピュアな彼から「今日の小野寺さん、可愛いね」なんて恥ずかしがることもなく、ストレートに言われたりしちゃうから、アピールはやめられずにいる。


なんの下心もなく、私と同じように他の女性社員が髪型を変えたり、いつもとは違う服装で出勤するたびに声をかけてくれる。

だからこそ厄介だ。純粋な感想にひとり浮かれ、踊らされているのだから。
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