次期社長の甘い求婚
「じっ、神さんっ?」


トクンと胸が鳴ってしまい、声が裏返ってしまった。

なのに神さんは一向に離してくれる気配がなく、私の身体のぬくもりを確かめるように、次第に抱きしめる腕の力を強めていく。


なっ、なんなの一体!?
もしや昨日の復讐!? 驚き慌てふためく私を見て、「ざまーみろ」とか思っていたりする?


パニック状態の中、必死に思考を巡らせていると、相変わらず私を抱きしめたまま、神さんは思いもよらぬ言葉を漏らした。


「あー……ずっとこのままでいたい」


…………はい?


なけなしの思考回路がプツリと途絶えてしまう。


とんでもない言葉が耳に入ってきたんだけど……なにかの聞き間違いですよね?


徐々に腕の力は緩められていき、やっと顔を上げることができた。

彼の胸板に手をつき、顔を上げると視界に飛び込んできたのは、とびっきり甘い瞳で私を見つめる彼の顔――。

とろとろに蕩けてしまいそうに目を細め、ほんのり口角を上げるその表情に、息が詰まる。
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