次期社長の甘い求婚
「いいよ、無理して専務なんて呼ばなくて。なんか小野寺さんに主任って呼ばれた方が、しっくりくるし」

「……すみません」


最初は驚いて声も出せなかった。


住みやすい環境に惹かれた町で、営まれていた駄菓子工場。


お父さんにも同じ専門の会社がいいんじゃないか? と助言を受け迷うことなく事務員の求人に申し込んだ。


無事に内定をもらい出勤した私の目の前に現れたのは、なんと鈴木主任だったのだ。


偶然だった。知る由もなかった。
まさかここが鈴木主任のご両親が経営する会社だったなんて。


だけど鈴木主任の存在のおかげで、すぐに私は従業員のみんなと打ち解けることができた。


それに不本意ながら嬉しかった。
元気に働く鈴木主任と再会できたことが。
また一緒に仕事できることが。



「すみません、営業いってきますので留守お願いします」

「分かりました、お気をつけて」

お昼前。作業服を着ていた鈴木主任はいつの間にかスーツに身を包んでいた。
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