次期社長の甘い求婚
鈴木主任はどこにいっても、やっぱりみんなに愛される存在だ。


そりゃこの工場で一番若いし年も近い。
けれどそれだけの理由でからかうのはやめてほしい。


鈴木主任にとって私は妹のような存在でしかないわけで。


もちろん私にとって鈴木主任は、今は尊敬する上司だ。
それなのに入社当時から三年間、なにかとからかわれ続けてきていて、さすがにもううんざりだ。


「もー、松田さんってばいい加減にしてください! 何度も言っていますが、私と鈴木主任はそういう関係ではありませんから。私、みんなのお茶用意して来ます!」


きっぱり言い切り、給湯室に駆け込んだ。


まったくもう。
どうして毎回毎回からかうかな? それに鈴木主任も鈴木主任だ。

私達はそういう関係じゃないんだから、きっぱり言ってくれればいいのに。
そうすればこんな風にからかわれることも、ないはず。


いつも十時と三時に一度休憩を挟むことになっている。


そのお茶を淹れるのは、私や松田さん、時には鈴木主任のお母さんである副社長が請け負っている。
まぁ、大抵は私の仕事だけど。


苛々する気持ちを必死に押さえながらやかんを火にかけ、お茶の準備を進めていると「あの……」と急に声が聞こえてきたのもだから、過剰に身体が反応してしまった。
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