次期社長の甘い求婚
「ごっ、ごめん! 驚かせるつもりはなかったんだ」

「鈴木主任!」


給湯室に躊躇いがちに入ってきたのは、いまだにびしょびしょに濡れたスーツに身を纏った鈴木主任だった。

「ちょっと話がしたくて」

「いや、それよりも服ですよ! 早く着替えないと風邪引いちゃいますよ!?」


「好きなんだ!」


私の声に被せるように発せられた大きな声に、動きが止まってしまう。


「――え」


目だけ動かし彼を捉えると、頬も耳も真っ赤に染めてわずかに身体を震わせている。


「小野寺さんのこと、好きなんだ」


唖然とする私に再度声を上げる彼に、身体の硬直が解け焦りを感じてしまう。


え、ちょっと待って。
鈴木主任ってばなにを言っているの? ……私を好き?


頭が混乱する中、鈴木主任は真っ直ぐ私の目を見つけ話し出した。



「ずっと妹みたいな存在だった。……でもこうやって再会して、同じ職場で過ごしていて。笑顔が可愛いな、とか気遣いが出来る子だな、とか。……正直、仕事辞めて戻ってきてから毎日が辛かった。そんな時に小野寺さんが来て、いつの間にか笑えている自分がいて。……小野寺さんと一緒にいると心が温かくなる。話せているだけで嬉しくなるんだ」


鈴木主任……。
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