次期社長の甘い求婚
『あちゃー、ついにきたか。冴えない眼鏡の愛の告白が』

「もう、亜紀ってば何度も言っているでしょ? 鈴木主任のことそんな風に呼ばないでって」


この日の夜。
帰宅してのんびり寛いでいると、亜紀から電話がかかってきた。


『いいじゃん、私の中で彼はいつまでも“冴えない眼鏡”なの』

もう、亜紀ってば……!


三年前、神さんの前から姿を消した際、亜紀にも真実を告げることはしなかった。

亜紀に話してしまったら決心が鈍ってしまいそうだったから。


それでも彼女にだけは真実を告げたくて、気持ちの整理がついた半年後連絡をしたのだ。
もちろん散々怒られて文句を言われて。そして〝心配した〟と泣かれてしまったのは言うまでもない。


それからはこうやって頻繁に連絡を取り合い、そしてたまに連休を利用して遊びにきてくれることもある。


『いつかはこんな日が来ると思っていたのよねー。奴も美月の魅力に気付く日がさ。それが現実になっちゃったわけだ』


電話越しから聞こえてくる笑い声に、居たたまれない気持ちになってしまう。


『で? どうするのよ。付き合うを通り越して結婚を申し込んでくるってことは、かなり本気だと思うけど』


「それは……」
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