次期社長の甘い求婚
「それと鈴木主任とのことも、前向きに考えてみる」

『うん、それがいいと思う』


すぐに聞こえてきたのは肯定の言葉。

亜紀との電話を切った後、開けられずにいた招待状の封を切り、早速返事を書いた。
出席に丸を付けて。



二週間後――。


「ごめんなさいね、美月ちゃん。事務職のあなたにも手伝わせてしまって」


「いいえ、そんな気にしないで下さい。それに今の時期は松田さんひとりでも出来ちゃうくらいの仕事量ですから」


この日はいつもの事務作業ではなく、製造工場で製品の箱詰めを手伝っていた。


鈴木主任のお父さんである社長が先日ぎっくり腰になってしまい、人手不足に陥ってしまったのだ。
かと言って事務員の私にできることと言ったら、こういった簡単な作業しかない。


「むしろすみません、これしかできなくて」


本当はもっと色々な仕事ができればいいんだけど。


申し訳なくなってしまうと、一緒に作業をしていた副社長、鈴木主任のお母さんは手を左右に振った。


「そんなことないわ。これもなかなか大変な作業なのよ。手伝ってもらえて、本当に助かっているわ」
< 355 / 406 >

この作品をシェア

pagetop