次期社長の甘い求婚
笑顔で言われると、気恥ずかしくなってしまい、慌てて「ありがとうございます」と言いながら、手を動かした。


副社長は優しさが滲み出ているような人で、笑顔がとても似合う人だ。
その笑顔は鈴木主任にそっくりだと思う。


しばし作業に没頭していると、ふと副社長は声を上げた。


「そういえば一郎から聞いたわ。やっとあの子、美月ちゃんにプロポーズしたって」

「……えっ!?」


なんの前振りもなく振られた話に手は止まり、大きな声を出してしまった。
そんな私を見て、副社長は笑い出した。



「ごめんなさいね、我が息子ながら恥ずかしくなるくらい分かりやすい子だから。……正直、私も主人も一郎と美月が一緒になってくれたら、これ以上嬉しいことはないわ。もちろん大切なのは美月ちゃんの気持ちよ。まぁ、あの子のいいところって言ったら優しいくらいしかないけど。だから気負わずにね。ダメならダメでキッパリ振ってくれていいから」


「副社長……」


胸がギューっと締め付けられてしまう。
それと同時に、想像してしまった。


鈴木主任と結婚してからのことを――。


副社長はとても優しくて、社長も人情味のある人だ。
きっと四人で幸せな毎日をおくれるはず。


「ごめんなさいね、仕事中にこんな話しちゃって」

「あっ、いいえそんな」
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