次期社長の甘い求婚
『そっか。……聞いたときは驚いたが、父さんはいいと思う。美月が幸せになれるのなら応援するよ』

「え……」


予想外の反応に呆気にとられてしまう。
神さんとのことがあったし、ちょっぴり難色を示されると思っていたから。


『もしかして美月は父さんが反対するとでも思っていたのか?』


疑いめいた声に慌てて「そんなことないよ」と返したものの、正直図星だった。

それに気づいたのか、お父さんは小さく息を漏らした。



『反対しないよ。相手は美月が働く会社の息子さんだろ? ご両親には俺も一度美月がお世話になる際挨拶させてもらったけど、人情味あふれた人柄だったし、息子さんも優しそうな好青年だった。……彼なら大切な美月を託せると思うから』


「お父さん……」


『こう見えても一企業のトップだ。人を見る目だけはある』


得意気に話すお父さんに、面食らってしまう。


でもそっか。お父さん、反対しないんだ。


鈴木主任と結婚することが私にとって幸せへの道なのかも。
きっとみんなに祝福してもらえるでしょ?


『父さんは美月が幸せになれるよう、いつも願っているから。よく考えなさい』

「……うん、ありがとう」


それから少し話し電話を切った後、向かってしまった先は寝室のクローゼット。

そっと開け、奥に隠すようにしまっておいた小さな箱を取り出した。
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