次期社長の甘い求婚
三年経ってもダイヤモンドの輝きは失われていない。


別れる際、手紙と共に返そうかと思ったけれど出来なかった。
神さんがプロポーズと共にプレゼントしてくれた、この指輪だけは――。


しばらくの間、お守りのように肌身離さず首からさげていた。
神さんも頑張っていると思い、必死に自分を奮い立出せながら。


それも神さんに恋人がいる……と分かった瞬間に外し、こうやって封印するようにクローゼットの奥にしまったのだ。

いつまでも神さんの面影にすがっていてはダメだと思ったから。


「鈴木主任と一緒になるなら、これをどうにかしないと」


それとスクラップした沢山の記事も。
神さんの面影は全部処分しよう。


そうすることできっと、私は前に進めると思うから――……。



……とは言ったものの、あれから一週間経った今も処分できずにいる。


捨てようと何度も思っては躊躇っての繰り返し。


そうなるとズルズル引き伸ばしになってしまっていた。


こうなったら来週、亜紀の結婚式で上京する際に持っていって、潔く亜紀に捨ててもらおうかな。
そんなことさえ考えてしまっていた。


「美月ちゃん、飲んでいるか?」

「あっ、はい飲んでいますよ」
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