次期社長の甘い求婚
「すみません、大丈夫です。私達が勤めていた会社の社長が出ているんですもの。見ましょう! それに松田さんも見ているし」


チラッと目配せすれば、松田さんはテレビに釘づけ。

その姿に鈴木主任とふたり、顔を見合わせ笑ってしまった。


「本当だ、あれじゃ変えたら怒られそうだね」

「そうですよ、だから大丈夫です」


平静を装い、松田さんのようにテレビを見つめた。


『それにしても就任一年目にして、神社長の手腕に業界内でも評価が高いわけですが、その原動力はなんですか?』


インタビュアーが質問すると、神さんは少しだけ考え答えた。


『そうですね……大切な人がいるから、かもしれません』

――え?


『今の僕を支えてくれている大切な人です。彼女がいるから頑張れるんです』


やだ、なにそれ。……そんなの聞きたくない。


それでもテレビを消さないことには、嫌でも耳に届いてきてしまう。


『それはつまりえっと……今、噂になっている方、でしょうか?』


インタビュアーが恐る恐る問いかけると、神さんは笑顔で『ご想像にお任せします』と答えた。

「……っ!」
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