次期社長の甘い求婚
どうしよう、胸が苦しくて仕方ない。
視界がぼやけてく。


神さんに恋人がいることは知っていた。
だから私も鈴木主任との未来を見据えようと思っていたのに――。


だめみたい。

神さんの声で聞いちゃったら、嫌でも理解できちゃった。
私は今も神さんのことが好きなんだ。


好きでどうしようもない。


神さんの恋人が羨ましくて、憎くて仕方ない。


彼の隣にいるのは私であってほしい――。


自分から別れを切り出して、何やっているんだろう。
時間が経てば自然と気持ちも消えていくと、思っていたのにな。

涙が頬を伝った瞬間、慌てて立ち上がった。


「すみません、ちょっと夜風に当たってきます」

「え、あっ小野寺さん!?」


一気に騒ぎ出す室内。
下を向いたまま、逃げるように立ち去り外に飛び出した。


走って走って少しでも鈴木主任の家から離れていく。
次第に息は上がっていき限界を迎え足を止めると、肩を大きく揺らしてしまう。
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