次期社長の甘い求婚
泣きながら走ったせいか、いつもより呼吸が苦しい。


溢れる涙を拭いながら空を見上げてしまう。
星はひとつも見えなくて、どんよりした雲に覆われていた。


想い続けても報われない気持ちなのに、どうして私は諦められないのかな?


神さんじゃなくて、鈴木主任を好きになれないのだろう。


誰が聞いたって、鈴木主任と結婚するべきって言うはずなのに。
それが私にとって、最高の幸せなはずなのに――。


報われない気持ちを抱えているのは辛い。

鈴木主任に片思いしていた頃よりも、もっとずっと――。


苦しくて苦しくて涙が止まらない。
それなのに、神さんを好きって気持ちが溢れて止まらないなんて。


「小野寺さんっ!」


涙を流しては拭ってを繰り返している中、聞こえてきた切羽詰った声で私を呼ぶ声。


「やっと見つけたっ……!」

「鈴木……主任?」


もしかして追い掛けてきてくれたの?

まさか追い掛けて来てくれるとは思わず、目を見開いたまま見つめてしまう。

必死に呼吸を整え私を見た鈴木主任は、苦しそうに表情を歪ませた。
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