次期社長の甘い求婚
「っごめん」

「――え、キャッ!?」


次の瞬間、思いっきり腕を引かれると同時に鈴木主任に抱きしめられてしまった。
苦しいほど抱きしめてくる彼に、声が出ない。


突然の抱擁に涙もすっかり止まってしまった中、鈴木主任は苦しそうに声を絞り出した。


「俺じゃだめかなっ……？　俺なら小野寺さんのこと、こんな風に泣かせたりしないよ」

「……鈴木主任」


ゆっくりと離されていく身体。
私を見つめる瞳は男の色気を含んでいて、初めて見る姿に心臓が飛び跳ねた。


「絶対に泣かせたりしない。なにがあってもそばを離れない。……俺と結婚して幸せになろう」


訴えかけるように言われる言葉に、胸が痛む。


そう言ってくれて素直に嬉しい。
だからこそ、言わないと。


「……ごめんなさい、私じゃ鈴木主任と結婚できません。今も神さんのことが大好きなんです。こんなに情けないほど泣いちゃうくらい」


鈴木主任と距離を取り、深く頭を下げた。


「私だって鈴木主任と結婚したら、絶対幸せになれると分かっています。それでもだめなんです。……今もこんなに彼のことが好きでっ……！」


溢れる思いは止まらず、また涙と変わり溢れ出す。
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