次期社長の甘い求婚
【I only hero】※私だけのヒーロー
「もー、大丈夫! ちゃんと今東京に着いたから。……うん、明日の式にはちゃんと出席するから」


一週間後――。
亜紀の結婚式に出席するため、前日の今日午後十六時、三年ぶりに東京駅に降り立った。


電話を切り、人混みの中をキャリーケースを引きながら進んでいく。



一週間前、自分の気持ちに気付き鈴木主任に結婚を断ったものの、彼も会社のみんなもいつも通りに接してくれている。


あとでこっそり松田さんが教えてくれたんだけど、それは鈴木主任がみんなに頼んだらしい。


“俺のせいで小野寺さんがこの会社に居づらくなることだけは、しないで欲しい”


その時の鈴木主任の声真似をしながら話されたときは、泣きたくなった。


本当にどうして私は、あんなに素敵な鈴木主任じゃだめなんだろうと。


松田さんには正直に『残念』って言われちゃったけど、最後に『美月ちゃんが幸せになれることを、みんな願っているから』と言われたときは、我慢できず泣き出してしまった。


社長と副社長にも『気にせず、これからもずっとここで働いて欲しい』と切願され、なんて私は幸せ者なんだろうと思わずにはいられなかった。
< 370 / 406 >

この作品をシェア

pagetop