次期社長の甘い求婚
お父さんに値段を聞いてみて、自分のお財布と相談して決めよう。


「小野寺様、どうぞこちらへ」


そんなことを思いながらも鏡を見つめてしまっている中、掛けられた声にハテナマークが浮かんでしまう。


「え、こちらって……?」

「終了しましたら、案内するように承っております」


レストランまで案内だなんて。
お父さんってばどこまで過保護なのだろうか。


呆れつつも女性に申し訳なくなってしまう。


「すみません、お願いします」

「いいえ、ご案内いたしますね」


業務外なことにも拘わらず、彼女は笑顔で案内してくれた。


サロンを出てエレベーターに乗り込み、最上階を目指すものとばかり思っていたけれど……。

彼女に案内されるがまま下り立ったのは、地上に二十階建てのホテルの十五階。しかも別館だった。


「あの……」

「こちらでお待ちです」


「ここではないのでは?」と聞きたかったけれど、声を被せられそれ以上なにも言えなくなってしまった。
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