次期社長の甘い求婚
それにお待ちですってことは、お父さんがいるってことだよね?


彼女の後を追ってやってきたのは、大きな扉の前。
待ち構えていたホテルマンとふたり、重い扉を静かに開けてくれた。


「どうぞお入りください」


どうしてここに……?


意味が分からないまま会釈し、足を踏み入れるとすぐにドアは閉じられてしまった。

足を止め振り返ったあと、もう一度前を見据えるとそこは教会。
まばゆいシャンデリアと花弁が散りばめられたバージンロード。
誰も座っていない参列者席。

そんな中、心地よいパイポオルガンの音色が響いている。


「お父さん……?」


前方の最前列に座る後ろ姿に声を上げると、スーツ姿の男性はゆっくりと立ち上がった。


「もう、なにこれ。どうしてここに呼び出したりなんか……」


カツンカツンとヒールの音を響かせながらお父さんの元へと足を進めていたものの、お父さんだと思っていた男性が振り返った瞬間、たちまち足は止まってしまった。


「……どうして、ここに?」


息が止まるかと思った。夢でも見ているのかと――……そう思ってしまうほど、目を疑ってしまう。

驚く私の元へ革靴の音を響かせ、一歩、また一歩とゆっくり歩み寄ってくる。

そのたびに心が揺れた。


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