次期社長の甘い求婚
近づく距離に戸惑いを隠せない。


もう二度と会うことはないと思っていた。
ううん、会えるはずなかった。


それなのに――……。


私の目の前まで来ると足を止め、三年前と変わらない甘い瞳で私を見下ろしてくる。


「久し振り、美月」

「……神さん」


天井の高い教会内にふたりの声が異様に響いては、パイプオルガンの音色にかき消されていく。


「少し痩せた……?」


ゆっくりと伸びてきた長い腕。
迷いなく私の頬に触れた瞬間、胸が飛び跳ねてしまう。


神さんの大きな手が頬を包み込み、愛しそうに撫でられていく。


今って夢じゃないのかな……? 目の前に神さんがいるなんて。


いまだに現実を受け入れることができない。
それでも気持ちは溢れ出し、視界がぼやけてしまう。


「どうして神さんがここに……?」


擦れる声で問いかけると、神さんは困ったように笑った。


「約束を守ったから。……だから美月をもらいにきた」

「――……え」
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