次期社長の甘い求婚
しばし神さんの様子を窺っていたお父さんは、安心したように肩を落とした。


「それを聞いて安心したよ。せっかくだから、一緒に食事でもしよう。席もしっかり三人分予約してあるから」


自然と神さんと顔を見合わせてしまい、どちらからともなく口元を緩ませてしまった。


それから最上階にあるレストランに移動し、三人で食事を楽しんだ。

――と言っても、神さんとお父さんが経営学について熱く語り合っているのを、聞いていた時間がほとんどだったけど。



「ごめんな、食事のときは」

「え、なにがですか?」


その日の夜。
神さんは私の部屋に泊まり、久し振りに肌を重ね合った。


余韻に浸るようにお互いの身体を密着させていると、ふと神さんが急に謝ってきたものだから、首を傾げてしまう。


「いや、ほら。俺と高岡さんだけでずっと話していたようなものだろ? ……美月、退屈じゃなかったかと思って」


髪に触れる優しい指が心地よくて眠ってしまいそうになるも、首を左右に振った。
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