次期社長の甘い求婚
けれどもうこうなってしまったら、どうすることもできない。

鈴木主任も行くことに変わりないし。

私も早く残りの仕事を終わりにしてしまおう。

そう思い、席に戻ろうとした時、そっと腕を掴まれてしまった。


もちろん掴んだ相手はいつの間にか立ち上がっていた鈴木主任で、私の腕を掴んだままこちらに回ってきて、コソッと耳打ちするように顔を近づけてきた。


わーわーわー!! 近い近い!!


急に縮まった距離にひとりテンパるも、もちろん鈴木主任は通常運転。
鼓膜を燻ぶるように、吐息交じりに囁いた。


「ごめんね、なんか。……今度はこっそり誘うから」

「……はっ、はい」


だめだこれ。完全骨抜き状態だ。

せめてもの救いは、みんな仕事に集中していて私達のやり取りに気づいていないってこと。


「約束ね」


腕を離されゆっくりと顔を見れば、鈴木主任は満足そうに微笑んでいた。


これが純粋な気持ちで起こしている言動なのだから、鈴木主任はとんだ小悪魔男子だと思う。

自分は異性として見られていないと思っているのかな? だからこんなこと、平気でできるのだろうか。
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