次期社長の甘い求婚
幸いなことは先輩達に目の敵にされていないということだ。


さぞかし恐ろしいワークライフの幕開けだと恐れていたけれど、玉の輿を狙っている先輩達の未来を見つめる目は凄まじく、度肝を抜かれてしまうほど的を射ていた。


『小野寺さん、是非玉の輿狙ってね! 協力するから』

『結婚式の際はもちろん呼んでよね』


どうやら彼女達にとって神さんは最初から高値の花だったらしく、本気で玉の輿を狙っていたわけではなかったようだった。


非常に現実的だと思う。

リアルに御曹司と結婚なんてできるほど、現実はうまくいかないと見越して、同等レベルを狙っての私へのすり寄りだったのだろう。


神さんとの恋愛が成就するよう、この二日間で散々恋愛の極意というものを伝授され続けている。


イジメられるより遥かにいいことだけど、困り果てている。

到底先輩達の期待に添えることなど、できないのだから。



「おはようございます」

沢山の注目を浴びながら庶務課の扉を開けると、既に出勤していた同僚達からは口々に挨拶が返ってくる。
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