次期社長の甘い求婚
いつもの光景にように見えるけど、みんなが私を見る目は確実に変わってしまっている。
それは鈴木主任も同じ。


「あっ、おはよう小野寺さん」


先に出勤していた鈴木主任は、散らかしっぱなしのデスクから、今日もまた何かを探しているところだった。

私の姿を見ると、いつものように声を掛けてくれたわけだけど……その目はなにかを言いたそうだ。


自分のデスクにバッグを置き、パソコンを起動させ準備を進める間もその視線はビシビシ感じてしまう。


「……あの鈴木主任、なにかご用ですか?」


あまりに居心地が悪くこちらから声を掛けると、鈴木主任は大きく身体を反応させた。


「あっ! いやその……」


そしてまるでなにか言いたいのに言えない女の子のように、身体をもじつかせ始める。


「あの……?」


痺れを切らし再度声を掛けると、鈴木主任は小走りで私のデスクへと駆け寄ってきた。


「ごめん!! いっつも申し訳ないんだけど、物品請求書やるのすっかり忘れていて。……お願いしてもいいかな」
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