次期社長の甘い求婚
すき焼きも食べ頃となり、作ってくれたお店の人達は静かに個室を後にした。


「さ、冷めないうちに食べよう」

そう言われるがまま、箸を手になど出来そうにない。


神さんが本気なら、このままズルズルと一緒に食事なんてできないよ。


「あの、神さん」

「んー?」


割箸を割り熱々の肉を口に運ぶ神さんに、自分の気持ちを伝えていった。


「神さんが本気だって分かりました。……だから私もちゃんと本音を言わせて下さい」


その言葉に箸を持つ手が止まり、私を見据えた。


「何度も言っておりますが、神さんがなんて言おうと私の気持ちは変わらないんです。……ううん、神さんだから興味なんて持てません」


「……は?」


呆気にとられる神さん。
けれど当たり前だよね。こんなこといきなり言われたって「は?」ってなるの、当たり前な話だ。


「それとごめんなさい。私、好きな人がいるんです」

「好きな……人?」

「はい」
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