次期社長の甘い求婚
〝好きな人〟そのワードに頭に浮かぶのは、やっぱり鈴木主任。


「私もその人のことが本気で好きなんです。どんなに神さんが素敵な男性でも気持ちが揺るがない自信があるくらい」


もしかしたら亜紀の言う通り、見かけ以上に神さんは魅力的な男性なのかもしれない。

それでもやっぱり私の好きな人は、鈴木主任なんだ。


亜紀曰く〝冴えない眼鏡〟かもしれない。

仕事がデキるわけでもないし、特別目を引く容姿を備えているわけでもない。


けれど優しくて、その場の雰囲気を和やかにする力を持っている人で。
笑った顔に何度も胸をときめかされてしまう。


「だからごめんなさい。……こうやって神さんに奢ってもらうわけにはいきません。――困ります」


期待せるようなことしたくないから。

気持ちが向かないって分かっているのに、これ以上ふたりっきりで過ごすわけにはいかない。


深く頭を下げ、荷物を手に持ち立ち上がった。


「せっかく誘って下さったのに、申し訳ありません。けれどこれ以上神さんとふたりで過ごすわけにはいかないので、ご了承下さい」


再度頭を下げ、二度と神さんを見ることなく個室を後にした。
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