次期社長の甘い求婚
『それにしても、つくづく美月って勿体ない人生を送っているわよね』

「すき焼き食べられない人生?」

『違うわよ!』


さっきはすき焼き食べずに帰ってきたことに対して〝勿体ない〟と言っていたくせに。

心の中で悪態をつきながらも、口を挟むことなく亜紀に話しに耳を傾けた。


『せっかく恭様が新しい恋をするチャンスをくれたっていうのに。しかも相手は我が社の次期社長よ? こんなチャンスもう二度とないのに勿体ない!』


今度こそこっちの〝勿体ない〟がきた。


「そう言われると思った」


苦笑いしてしまうと、亜紀は電話越しにすかさず突っ込んでくる。


『当たり前でしょ? ……あんたさ、いい加減過去のトラウマから脱出したいと思わないの? そのリハビリに恭様は打ってつけだと思うんだけど』


「そんな簡単に言わないでよ」


『所詮私は美月じゃないから言えるの! いや、むしろ言ってあげているのよ。でないとこれからもずっと人生損して生きていくことになるのよ』
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