次期社長の甘い求婚
悪気があって言ったわけじゃない友達たちを叱るお母さん達を見て、子供ながらに〝私の家は普通じゃないのかも〟って思ったんだ。


そこからはずっと当たり前だと思っていた生活に、疑問を抱くばかりだった。


友達の両親はお父さんが働いている。中にはお母さんも働いている家庭もあった。


それなのにうちはお父さんがいないのに、お母さんは働きに行くことはなく、ずっと家にいた。私が生まれてからずっとだ。


けれどお母さんに聞くことはできなかった。
たったふたりっきりの家族で、お母さんはいつも優しかったから。



私が全てを知ったのは、中学三年生の時だった。


もう理解できる年齢だと判断したお母さんが全て話してくれた。


それは私が想像していた以上に驚愕する内容で、なんともいえない気持ちに襲われた。


「美月のお父さんはね、有名な企業の創設者の家系で。どうしても私とは結婚できなかったのよ」


ここから始まった話は衝撃的なものだった。
< 82 / 406 >

この作品をシェア

pagetop