次期社長の甘い求婚
高校生になると言われることはなくなったけど、中学生まではよく同級生たちに聞かれたり、からかわれたりした。


お母さんはお父さんも辛い判断だったとか、仕方なかったのよなんて言っていたけど、だったら貧乏でもいいから、最初からお母さんとふたりの生活がよかった。

家庭を持っているお父さんに頼ることなく私のことを育ててほしかった。


お父さんのことなんてなにも知らないけど、お金で全て解決している感が、大きくなればなるほど否めなくなっていき、お父さんのような御曹司の男なんて、絶対私は好きにならないと思うようになっていった。


私は平凡で和やかな家庭を築きたい。

子供に嫌な思いをさせることなく、幸せに暮らしたい。笑い合って毎日過ごしたい。


その思いが大人になるたびに、強くなるばかりだった。


就職先は、お母さんから「お父さんへの恩義として、有名な企業に就職しなさい」と言われ、今の会社に入社した。

私は働けて家を出られればどこでもよかったけど、そこは素直に従った。
これが親孝行になるだろうと思って――。
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