次期社長の甘い求婚
大学を卒業し、社会人になった私へのお父さんからのお金の援助はなくなり、あれほどお父さんのことが好きだと言っていたお母さんは、あっさり新しい恋人を作った。


私の一人暮らしを機に、今では恋人と同棲生活を送っている。


そんなお母さんとはずっと連絡を取っていないし、取りたいとも思わない。


どこかの有名な企業を経営しているお父さんには、大学まで行かせてもらったことに対しては感謝しているけど、今さら会いたいなんて思わなかった。


今の会社に入ったことで、今まで別々に育ててくれたふたりへの恩義は果たせたと思うし。


社会人になったことを機に、私は私で幸せになろうと決めたんだ。


お母さんみたいに、男の人に頼るばかりの人生なんて送りたくない。

お父さんみたいに、全てお金で解決しようとする人とは、絶対結婚したくないって。


平凡でもいい。一生私を愛してくれて、幸せな家庭を築いてくれる人。
そんな人と恋愛がしたいと思った。



* * *


『見せつけてやればいいじゃない、ふたりに。同じ境遇の関係でも私はこんなに幸せなのよって』

昔の思い出に更けていると聞こえてきた亜紀の声に、ハッと我に返る。
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