次期社長の甘い求婚
一方私はというと、ぱったり神さんが庶務課を訪れなくなったせいか、「やっぱり一時的なことだったんだ」とか、「愛想尽かされちゃったんじゃないの?」なんて陰口を叩かれ、先輩達の態度も一変。


私に期待していた分、どことなく最近冷たい気がする。


それでも嫌がらせをされるわけでもなく、ただ淡々と日々与えられる業務をこなすのに、支障をきたすものではない。


そして鈴木主任との関係は……と言うと、もちろん大きな進展どころか小さな進展もあるわけがなく、上司と部下の関係のまま。


あっ、違う。
大きく変わったことがあった。


つい二日前の始業前、庶務課のみんなの前で鈴木主任が報告をしたんだった。


『来年の春に、結婚する予定です』って――。


庶務課内は一気に祝福モードになったけど、私は皆と同じように拍手を送るだけで精一杯だった。


彼女がいて婚約者になった。

その時点でいつかはこんな日が来るとは思っていたけど、実際に具体的な式の日取りを聞かされてしまうと、辛い現実を突きつけられた気がした。
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