次期社長の甘い求婚
「お恥ずかしい話、寝坊しちゃって。いつもの電車より一本遅れちゃったんだ」

「そうだったんですか」


言われてみれば、いつも跳ねている髪がより一層ぴょんと跳ねている気がする。


「鈴木主任、だいぶ髪が大変なことになっていますよ?」


さすがにこれで勤務はまずいと思い言えば、鈴木主任は「うそっ!?」と声を上げ、慌てて両手で髪の毛を整え始めた。


「どうかな? 直った!?」


自信ありげに言われるも、正直あまり変わらない気もするけど、これがいつもの鈴木主任のヘアースタイルだと思う。

髪がぴょんと跳ねているのが。


「はい、大丈夫です」


ハラハラしながら私を見る鈴木主任を安心させるように笑顔で言えば、安心したように大きく肩を落とした。


そしていつものように、ヘラッと頼りない笑顔を見せる。


あぁ、もう。
朝から人をキュンとさせるなんて。
< 92 / 406 >

この作品をシェア

pagetop