次期社長の甘い求婚
平静を必死に装い、鈴木主任と一緒に会社へと向かっていく。

すると鈴木主任は何の前触れもなく、突然話し出した。


「あっ! そうだ!! 小野寺さん、今日って仕事終わりなにか予定ある!?」

「予定、ですか?」


突然思い出したかのように声を上げた鈴木主任に驚くも、特に用事はないことを伝えると意気揚々と話し出した。


「じゃあさ、今日こそご飯奢らせてくれる? ほら、この前約束したでしょ? いつもお世話になっているお礼をさせて欲しいって」


びっくりだ。

半月前くらいの約束をちゃんと覚えてくれていたなんて。


「職場で誘ったらこの前の二の舞になりそうで、なかなかタイミングが掴めなくてさ。今さらって感じだと思うけど、よかったら付き合ってくれる?」


〝付き合ってくれる?〟


ただ食事に付き合ってくれる?って意味だと分かっているのに、ドキッとしてしまう。


「……もしかして予定があった?」


なにも言わない私に予定があると思ったのか、申し訳なさそうに見つめてくる。


「あっ、いいえ違うんです! えっと……予定もないので、鈴木主任さえよろしければ是非……」
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