次期社長の甘い求婚
弱音を吐く姿に、胸がときめいてしまう。


それと同時に思ってしまった。

鈴木主任は婚約者の彼女の前でも、こうなのだろうか。

会社では絶対に吐かない弱音や愚痴を、毎日のように見せているの?


さっきまであれほど幸せな気持ちでいっぱいだったというのに、ふと感じた疑問ひとつで気分は沈んでいってしまう。


少しずつ夢が覚めて現実に引き戻されていく気分だ。


そんな私に鈴木主任は、さらに現実を突きつけてきた。


「なんかごめんね、上司のくせに部下である小野寺さんに愚痴っちゃったりしちゃって」


申し訳なさそうに眉をひそめ、頭を下げ出した鈴木主任に、慌てて手を左右に振った。


「そんな謝らないで下さい。……わっ、私でよかったら、いつでも話聞きます」



自分でも思い切った発言だと思う。
けれど、どうしても伝えたかった。私の本音を――。


鈴木主任の話ならなんでも聞きたいって思うから。


すると鈴木主任は嬉しそうに頬を緩々に緩ませた。
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