レーザービームの王子様
《あれな。たまたま当たって遠くに飛んだからよかったけど、普通はあのボール球に手ぇ出すなってコーチにめっちゃ言われた》

「あはは、でも結局ヒットになったんだからすごいで」



す、と言い切る前に、手の中からスマホがいなくなる。

唖然とする私。その目の前で、総司が何やら私のスマホを操作していた。



「っちょ、総司なにやって」

「ほらすみれ、こっち来いよ」



こちらの抗議は完全スルーした総司に、ぐいっと肩を抱き寄せられた。

顔がくっつきそうなほど近付く。奴が左手で持った私のスマホを、目の前に掲げた。

その画面には、驚いたような表情をした久我さんがいて。



「はっ、え、なにこれビデオ通話にしてんの??!」

「どーもー。久我さん、俺のことわかります?」



軽く首をかしげて、総司がスマホに映る久我さんに笑いかけた。

でも私にはわかる。これ、総司の必殺・人当たりがいい作り笑顔だ。



《……こないだの》

「あ、覚えててくれました? つーかまあ俺、最初に【むつみ屋】で会ったときもすみれの隣りにいましたけどね」



真顔の久我さんに対し、引き続き総司はにこにこ笑顔。

え、なにこの状況。ていうか、コイツはなんでこんな無駄に近いんだ。


一見、何の問題もなさそうだけど……どうしてか、総司と久我さんが睨み合ってるように見えるのは気のせい?
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