レーザービームの王子様
結局、その日はほぼ定時に仕事を終えることができた。

更衣室で着替えを済まし、帰路につく前にとオフィスの外にある化粧室に寄る。

そこで偶然会ったのは、営業第1グループの美女・柴咲さんだ。



「あ、お疲れさまですー柴咲さん」

「深町さん。お疲れさま」



アフターファイブ仕様におろされたウェーブがかった髪をさらりと揺らし、柴咲さんが微笑む。

うーん、美人だ。いつどの角度から見ても美人。眼福だわあ。

イケメンより美女に出会う方が格段にテンションアップしやすい私は、思考が完全におっさん寄りなんだと思う。自覚はあるけど仕方ない。


柴咲さんは、洗面台の大きな鏡の前で化粧直しをしていた。

就業中に彼女がつけていたルージュはシックなベージュだったけれど、今の柴咲さんのくちびるは艶のあるピンク色のルージュで彩られている。

その変化に、ピンと来た。



「もしや柴咲さん、今日はこの後デートですか?」

「えっ」



ぽっと、柴咲さんが頬を染める。

恥ずかしそうに目を伏せながら、彼女はこくりとうなずいた。


……なんだこの破壊力!! かわいすぎでしょ!!!


デートってことは、相手は印南さんで間違いないはず。

にわかには信じがたいけど、あの無表情男子が超絶美人の柴咲さんをここまでかわいくさせるのだ。いったいどんな魔法……?


不躾なことを考えながら、つい柴咲さんのことを凝視してしまっていたらしい。

彼女はなんだか困ったように小首をかしげ、「深町さん?」と私の名を呼ぶ。
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