レーザービームの王子様
「おいおいヒサト、それ俺にくれるって言ってたやつだろ!」

「わりーな、また今度やるから」



レジで会計をしていた男の人が若干あわてたように声を飛ばして来たけど、男は笑い混じりの言葉を返す。

連れ、いたんだ。いやいやそれより、なんで私にこんなものを?


……ん? 『ヒサト』?


そこで私は初めて、まじまじと目の前の男の顔を見た。


さっぱりした黒い短髪。

広い肩幅とは裏腹な、モデルみたいに小さい顔。

弧を描く薄いくちびるに、サングラス越しで私を見下ろす切れ長の瞳。


……あの。なんかすっごい、見覚えある顔なんですけど。


自分を凝視したまま固まる私の思考を読んだかのように、男がますます楽しげな笑みを浮かべた。



「あんたが嫌いな久我 尚人が活躍する姿、近くでじっくり観てみろよ」



ビッと私に人差し指をつきつけたかと思えば、男はあっさり店を出て行った。

私、チケットを持ったまま呆然。

それからようやく、壊れた人形みたいな動きで隣りの幼なじみに顔を向けた。



「そ、総司。今のって……」

「ウィングスの久我 尚人、……本人だったなあ、どう見ても」

「う……っそでしょお~~??!」



テーブルに両手のこぶしをついて、私は思いきりうなだれる。

なんでなんで。まさかこんな、酒の席のひねくれた愚痴を本人に聞かれるってアリ??

だらだら冷や汗を流しながら力なく顔を起こし、むっちゃんに視線を向けた。
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