レーザービームの王子様
「あ、すみません。美人はついガン見してしまうタチでして」

「え、あ、ありがとう……? 深町さんこそ綺麗だから、そんなふうに言ってもらえるのうれしいな」

「いやいやいやそんな……」



両手のひらを向けてぶんぶん首を振る私に対し、ポーチのチャックを閉めながら「本当なんだけどなー」と言ってくれる柴咲さん。マジ女神。

なんていうかもう、つくづく……。



「柴咲さんって、どうして印南さんのことすきになったんですか?」

「え?」



きょとん、と大きな目をまたたかせる柴咲さんの横で、私は続けた。



「だって、いくら印南さんが世間一般の男性と比べてイケメンといえど、カテゴリー的には普通のサラリーマンですし。柴咲さんならもっとこう……御曹司とか医者とか弁護士とか狙えたんじゃないかなって」



というか、以前実際にそんな噂があったのだ。柴咲さんには医者だか弁護士だか政治家だかの恋人がいるって。

結局それはデマだったらしくて、去年の秋頃から印南さんと付き合っていることが公になったんだけど。


私の言葉を受け、うつむきながらうーん、とつぶやいた柴咲さんが、苦笑してこちらを振り向く。



「私、そんな大層な人間じゃないよ。むしろ、私からすれば印南くんの方が『すごいなあ』って思わされること多いもの」

「……そうなんですか?」

「そう。私のが、年齢も上だしね。だから未だに、私は彼に似合ってないんじゃないかなってしょっちゅう考えちゃう」
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