レーザービームの王子様
意外な言葉だった。柴咲さんほどの美人で女性らしくて仕事もそつなくこなせるような素敵なひとが、こんなことを考えてるなんて。



「自覚はしてるんだけど、私、もともとネガティブな性格なんだよね。そしてこういうウジウジ思考を印南くんに知られると、問答無用で笑われます」

「……印南さんって笑うんですか？？！」

「あー、はは。まああんまり笑わない方よね、彼」



さらに驚きの事実。そうか、あの常にポーカーフェイス印南さんは柴咲さんの前だとちゃんと笑うのか……。いや、そこはまああたりまえか。恋人の前だもんね。

思わず神妙な顔をしてしまう私を見て、柴咲さんはふふっと小さく笑みをこぼす。



「でもね、笑ったからといって、私のことを馬鹿にしてるわけじゃないんだよね。……私の話を聞いて、話してないことまで察してくれて。その不安がなくなるように、たくさん言葉を尽くしてくれる」

「………」

「普通の同僚だったときから、私がただの見栄っぱりだってことはお見通しだったみたいでね。それでも印南くんは涼しい顔で、私自身嫌いでたまらない弱くて後ろ向きな部分にずかずか入り込んだあげくべったべたにやさしくしてくれるから、」



彼女らしくない言葉遣いでそこまで捲し立てたのち、ほとんど苦笑みたいにふにゃりと表情を緩めた。
< 141 / 212 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop