レーザービームの王子様
「にしても、すみれって野球マニアなくせにバッティングは下手くそなのな。笑うわー」

「笑わないでください……! さ、最後のはちゃんと打てたじゃないですか!」

「うん。俺のアドバイスのおかげでな」



自信たっぷりに微笑まれ、ぐっと言葉に詰まる。

そう、まさにその通りだ。……その通りなんだけど、なんか悔しい……!



「久我さんなんて、盗塁しようとして走り出した直後にコケればいい……」

「ちょ、ヤメロ。それめっちゃカッコ悪いから」



うらめしげにつぶやいたら、久我さんが口の端を引きつらせた。

ふふん、私の恨み言、なかなか効果テキメンらしいですからね。発言には気を付けた方がよろしくてよ!



「すみれは、ここよく来んの?」

「あ、たまにですけど……会社から家の中間にあるので」

「へー」



そのやり取りを境に、ふたりの間を沈黙が包み込んだ。

……なんだろ、この空気。

えっと、なんか、気まずい。もしかして、さっきの私の軽口に久我さん怒った?

けど今までも、あんなふうにやり取りしたことあったし……ええっと、どうしよう。


久我さんと一緒にいて、こんな雰囲気になったのは初めてのことだ。私は合わせたひざをもじもじさせながら、話題を探して視線をさまよわせる。
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