レーザービームの王子様
ふっと、隣りに座る久我さんがいきなり深く息を吐いたから反射的に肩がはねる。

こちらを向いた彼と思いのほか近い距離で目が合って、心臓が高鳴った。



「……あのさ、すみれ──」



せっかく、久我さんが何か話そうとしかけたのに。

空気を読まない私のスマホが突然ベルを鳴らし、バッグの中から存在を主張する。

明らかに電話の着信だとわかる、それ。口をつぐんだ彼と私はそろって目を向けた。



「……電話じゃない?」

「え、あ、そうですかね。でも、大丈夫です」

「出れば?」

「や……ほんとに大丈夫なので」



……だって今は、久我さんと一緒なのに。

1対1でいるときに電話に出るのがしのびなくて放置しようとする私と、出ればいいのにと言う久我さん。

そんなふうに問答を繰り返してるうち、着信音は途切れる。

それでも彼に強く促され、私は一応スマホを取り出した。



「……あ、」



ディスプレイに表示されていた名前を見て、思わず声がもれる。

……総司。もしかして、今日早く仕事終わったのかな。

今週の間、会えそうな日は連絡するって言われてた。

けど、今、このタイミングは……。



「なに? かけ直さなくていいの?」



スマホを見つめたまま固まる私を不審に思ったのか、久我さんが訊ねてくる。

それでも動かない私に、なんでかピンと来たらしい。彼がいつもより低い声を出す。
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