レーザービームの王子様
けれども内心そうやってビビっているくせに、もともと頑固で負けず嫌いな性格が、今日この場に足を向けさせてしまったのだ。


ははーん、そうですか。そんなに自分のプレーに自信がおありですか。

そこまで言うなら見せてもらおーじゃない。凡フライ落としたりしたら、指差して笑ってやる!


……なんて、自分の方こそ性格悪いことを考えながらシャトルバスでここまで来たはいいけど。いざドームを目の前にしたら、やっぱりちょっと気が引けてしまう。

自分ひとりきりでの試合観戦は、もう何度も経験があるからいい加減慣れた。

問題は今回観戦するのが贔屓のチームじゃなくて、同じリーグのむしろライバルなチームたちの試合ってところだ。

私、ウィングスもタイタンズのも応援グッズ持ってないんですけど。スタンド行く前にドーム内のグッズショップ一応覗いて来よっかなあ。



《いいじゃない、プロ野球選手。年俸億とかウン千万の世界でしょ~? がんばってゲットしな!》

「ゲットって……あのねえ、」



ドームの出入口に続く階段をのぼりながら、スマホを持ち直す。



「そんな感じじゃないってば。完全にケンカの延長だからこれ」

《え~だって、久我 尚人っていったら野球興味ない私ですら知ってるイケメンじゃない。あんなイイ男に「きみのためにホームラン打つ!」とか言われちゃったら……やーん!》

「……それは寒いわ……」



興奮しきった様子で受話器からハートマークを飛ばしまくる広香に、思わず呆れ顔。

ため息をつきながら、胸の長さまである自分の髪を指先に巻きつけた。
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