レーザービームの王子様
──ああもう、限界だ。


止まったと思っていた涙が再び溢れて来る。彼のまっすぐな想いに心が震えて、声も出せない。


悲しみに暮れたあの日、ひとりよがりな理由で呪いの言葉を吐いた。

そんな私を、それでも『運命だ』と言ってくれるひとが、今目の前にいる。

こんなに、しあわせなことってない。



「う……っふぇ、く、久我さん……っ」



自分の頬を挟む彼の両手にそっと触れて、ただただ涙を流した。

そんな私を、ひたすら甘い眼差しで久我さんが見下ろしている。



「……そんなに、泣いて……」



いとおしそうにつぶやいたと思ったら、おでこにやわらかい感触。

それが久我さんのくちびるだったことに少し遅れて気付いた私は、唖然と彼を見上げた。



「く、がさん、今……」

「ん?」



どうかした?とでも言いたげな含みのある微笑みで、あざとく小首をかしげられる。

今さらながら近すぎる距離感に羞恥心が沸き起こって、体温が上昇した。


そんな私の様子に気付いたのか、久我さんはさらに笑みを深めて。

頬に添えられたままになっている右手の指先が、イタズラに動く。



「こないだ、いきなりキスしてごめん。……嫌だった?」



下くちびるを親指で撫でながら。低い声で訊ねられ、思わず息を止めた。

とたんに脳内を駆けめぐるのは、先日彼と路上で交わした濃密なキスの記憶。

かーっと一気に顔が熱くなって、それでも彼の問いかけを否定するために、声は出さず小さく首を横に振る。
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