レーザービームの王子様
「だよな。すみれあのとき気持ち良さそうだったし」

「そっ、そういうこと言います……?!」



恥ずかしさから、つい噛みつくように返す。

それでもたぶん今の私の顔は真っ赤だろうから、彼はまったく堪えてないのだろう。

だって、久我さんはそんな私にさえうれしそうな笑顔を見せている。



「ははっ。だって、うれしかったから。あのときすみれ抵抗しなかったから、内心俺、かなり舞い上がってたよ」

「うぅ……そ、そうなんですか……」

「うん。……散々キスしといて、何も言わないで悪かった。10年前のことを黙ったまますみれを手に入れようとするのは、卑怯だと思ってたんだ。だから、あのときはまだ何も言えなかったんだけど、」



頬を挟む手が、少しだけ私の顔を上向かせる。

真摯で、まっすぐな瞳。私の心を捕らえて離さない、瞳。

その目がやさしく細められる。



「もう、我慢しない。──すきだ、すみれ。だいすきだよ」

「……ッ、」



もう、何度目だ。

一体今日は、何度涙を流さなきゃいけないんだろう。


ぎゅっと目をつぶる。すぐにまた、まぶたを押し開ける。

私を見つめるいとしい彼と視線が絡んで、胸がいっぱいになる。

その首元に手を伸ばし、きつく抱き寄せた。



「わ、私も……久我さんがすきです、だいすきです……っ」

「ッ、」

「私のこと、見つけてくれて……ありがとう……っ」
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