レーザービームの王子様
……運命の恋、なんて。

そんなのまさか、自分に降って来ると思ってなかった。


だけど今なら、はっきりと言える。

久我さんが私を見つけてくれたのは、運命。誰が何と言おうと、私にとってこれが、運命の恋だ。



「……俺の方こそ。すみれは“すみれ”のままでいてくれて、ありがとう」



私の髪に顔をうずめるようにして、久我さんがつぶやいた。

それから、どちらともなく抱きしめる腕を緩めて見つめ合う。



「大事な妹に手ぇ出したって知ったら……橙李さん、夢に出てきて俺のことシバきまわしそう」

「ふふっ。そのときは、私も一緒に謝りますよ」



思わず吹き出して、彼の右手に頬ずりする。


そうだなあ。最初はきっと、不機嫌になるかも。

それでもたぶん、あの野球バカなお人好しお兄ちゃんは……私と久我さんのこと、『おめでとう』って祝福してくれるんだ。



「野球部内でもシスコンは有名だったからさ。くれぐれも頼みます」

「あはは、頼まれました」

「……うん。というわけで──……そろそろ、いい?」



訊ねながら熱い眼差しで射抜かれて、呼吸が止まった。

久我さんの親指が、先ほどと同じように私の下くちびるを撫でる。

その仕草が、その言葉が、何を意味するのかなんて……一度“それ”を経験してしまった私はもう、十分にわかってる。
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