レーザービームの王子様
思わず目を泳がせて、小さくつぶやいた。



「お、お手柔らかに……」

「さあ、それはどうかな」



にやりと意地悪く口角を上げる。そんな表情にすらときめいてしまうのだから、恋ってこわい。



「……すきだよ、すみれ。もう離さない」



耳元で甘くささやかれて、私が反応を返す前にくちびるを塞がれる。

今はもう迷わない。彼の首元に手をまわし、もっと欲しいとキスをねだった。



「ん、んん……」

「……すみれ、口開けて」



久我さんの恥ずかしい指示にも、深く考える間もなく従ってしまう。

従順に薄く開いた私のくちびるを食べるように、彼自身もガッと大きく口を開けて被せてきた。

一瞬身を引きかけるけど、腰と首の後ろを抑えられていてそれは叶わない。


頭のてっぺんからつま先までしびれて、力の抜けた足が震えてくる。

深く重なるふたりの隙間からは、熱い吐息と唾液の混じるいやらしい水音。恥ずかしいのに気持ち良くて、夢中で彼に応えた。



「はー……やばい、抱きたい……」



ふとキスが途切れたとき、きつく私を抱きしめた久我さんがため息とともに耳元でつぶやく。

何のオブラートにも包まれていない彼の欲望を聞かされて、否応なしに体温が上がった。


こんな感情、はしたないのかもしれない。それでももっとくっつきたいと思う気持ちは、私も一緒で。

……だけど。

思わず流されてしまいそうになる自分を叱咤し、腕の中から彼を見上げる。
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