レーザービームの王子様
「パパ、つぎはいつホームラン打つ? きょう? あした?」

「うーん、今日はお休みだから無理だなあ」



答えながら、尚人くんが環菜の頬にちゅっとくちびるをくっつけた。環菜は顔をくしゃくしゃにして楽しげに笑っている。

デレデレです。ウィングスの久我選手、目も当てられないほど娘にデレデレであります。



「ファンも期待してるらしいねー。久我選手の“記念日ホームラン”」

「ああ……結婚記念日とか誕生日とか、そういうときにはりきってホームラン狙うからなー」



そして、そういうときに必ずと言っていいほど打っちゃうからすごいんだ、この人は。

ほんと、野球の神様に愛されてますよ久我 尚人選手。



「えーっと、次の記念日っていうとすみれの誕生日だろ?」

「その後は結婚記念日だねぇ」

「あとすみれのお父さんお母さんの誕生日も狙いたいな。それが過ぎたら、また環菜の誕生日だ」

「ひゃー!」



尚人くんが名前を呼びながら高い高いすると、環菜がバンザイではしゃぐ。

思わず微笑みがこぼれるしあわせな光景。それを眺めながら、私はつぶやいた。



「んー……でもその前に、もいっこ大きいイベントあるかも」

「え?」



不思議そうに首をかしげた彼に、にっこり笑顔を向ける。

さーて、そろそろ出ようかな。きょとんと棒立ちになっている尚人くんの前を通り過ぎる直前、振り返って自分のおなかを撫でてみせた。



「予定日、来年の5月なんだよねぇ」

「よてー……っは?! えっ、ほんとに??!」

「ふふふふふ。さーってママちょっとおじいちゃまおばあちゃまのとこ行ってきまーす」

「ママいってらっしゃーい!」

「イヤイヤイヤ待てすみれ動くな俺が車で送るから!!」

「えー? もー尚人くんは過保護だなあ」



さてさて、来年の一大イベント。

彼はその日、試合に出てホームランを打てるのかなあ。



「あーもう……っすみれ愛してる! 環菜も愛してる!」

「きゃー! パパおひげいたいよぅ」

「あははっ、私も尚人くんと環菜愛してるー!」



大好きな人に娘ごと抱きしめられながら、私はしあわせを噛みしめた。


少し未来のヒーローインタビュー。きっと答えは、野球の神様だけが知っているのです。










/END
2016/06/14
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