レーザービームの王子様
「う……っく、」
込み上げる嗚咽を噛みしめながら、ぎゅっとユニフォームの胸元を右手で握る。
ついさっきまで自分がプレーしていた野球場。その外に隣接している水道の脇でしゃがみ込み、俺はひっそりと悔し涙を流していた。
──打たれた。中学2年になって初めて登板した公式戦で、ボコボコに。
エースピッチャーである先輩が足に打球を受けた故の緊急登板ではあったけど、しっかり準備はできていたつもりだった。でも本当は、全然覚悟が足りていなかったのだ。
立ち上がりは良かった。ひとりめのバッターは、セカンドゴロに抑えて。
でも、次のバッター。自分より1学年上の、背が高い相手校の遊撃手。
俺をまっすぐに見据えるその強い眼差しに怯んだ。甘いコースに入ったストレートは簡単に捉えられて、ライトスタンドに持っていかれた。
ワンボールノーストライクからの、完璧なソロホームランだ。その後もヒットだけじゃなくフォアボールや味方のエラーも重なって、結局この回3失点。
俺の中学2年の夏の地区大会は、2回戦であっけなく幕をおろした。
「……ッ、」
ごしごしと乱暴に目元をこする。それでも涙は止まらない。
チームメイトたちは、俺を責めたりしなかった。野球はみんなでするものだ。ピッチャーが打たれたらバットで反撃するだけ。それでもカバーしきれなかった、全員の責任だと。
俺自身も、自分以外のピッチャーが失点したならそう考えるだろう。それでもどうしたって、自分の未熟さが招いた『負け』という結果に押しつぶされそうになる。
今日はこのまま現地解散となったチームメイトたちから逃れるように、気付けばこの人気のない場所へとたどり着いていた。